ちょっと紙くらべ

個展の準備中ですが、必要な紙(A)がいくらか足りないことが判明&お店で在庫切れ、という問題が起き、制作も遅れ気味。
ちょっとハラハラする夏を過ごしています。
ですが勘では、間に合うと感じています。

ということで本日はあえて、そんな話しをする余裕はあるのか案件の投稿を行います。
愛用の紙二つ+新たに用意した紙一つ…三種類の紙に同じネコを描いて比べてみました。
それぞれの違いにご興味を持たれたお客さまはぜひ、大きな画面で冒頭のネコをご覧ください。
そうして見ていただいても、おっしゃられるセリフはきっと一つです。

―― 全部一緒やん

A〜Cの紙は、描き味はまったく違います。私にはそれぞれの仕上がりもまったく違うように感じられますが、別人になったつもりで見てみますと、確かにほぼ同じに見えます。ミステリー。

下に、それぞれの紙に対して私が感じている特徴や感想を書き出しました。前提として、普段は墨汁(薄めない)と面相筆で描いています。

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Aの紙

水墨画に向いた紙の廉価版。高価な紙は私にとっては描きにくかったため長年こちらを愛用してきた。理想に財布の中身が救われる結果に。
かすれた状態で引く線が長くのびる点が最大の特徴。なめらかに仕上げようと誓って集中すれば本当になめらかに仕上がる。ありがとう紙。
薄い紙なので、ミスをすると修正出来ないことも多い。
修正出来ない失敗を繰り返すことで、それまでに掛けた時間に何の意味があったんだろうという思いを何度も繰り返すことになります(よね)。その何度目かに急に吹っ切れて、まあ細かいことは何でもいいか、と思うようになります(よね)。すると自分の失敗に対して大らかになります(よね)。何が言いたいのかと言うと、私が図太いのはこの紙のせいだということです。

Bの紙

街の画材屋で買えるワトソン紙。どこでも待ち構えていてくれる。そんなやさしさと強さを兼ねそなえたワトソンくんは水彩紙の代表。
ざらざら感でこぼこ感は、他の水彩紙に比べて柔らかい方なのではないかと思います。そのため面相筆でもペン画の要領で描ける。
Aの紙が色を挿す要領で使う紙だとしたら、こちらは色を乗せる要領で使う紙。塗りやすい。照りも出しやすい。
かすれた線の風合いも出せるけれども、Aの紙なら紙の力に頼って簡単に引ける線が、こちらではあえて手で調節して作る必要がある。
強い紙なのでミスをしても修正がしやすい。
凹凸ある紙だからなのか、スキャンしてデータ化すると、重ねて描き込んだ一線一線の個性が少しぼかされる印象。原画の方がキレイ。

Cの紙

Aの紙の代用として用意した他社の紙。用途はAと同じものとして販売されているけれど描き心地はまったく違う。一旦墨が吸い込まれて乾くと浮いて来るような印象の紙。
かすれた状態で引く線ののびる長さがAの紙より短い。くっきりした線ならAの紙よりよくのびる。
ミスはAの紙より更に修正しにくく、ちょっと失敗した箇所にかすれ線を重ねて雰囲気で誤魔化そうとしても浮く。
スキャンしてデータ化したものと原画との間にあまり差を感じない。
Aの紙の代用とは言えないけれども、いずれ出番がありそう。

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以上、比べてみた感想でした。
もっと大量の紙と比較してみるのも楽しそうですが、もういい加減にした方がいいということで、9月の展示にはBの紙ワトソンを引き続き使うことにします。

個展「 ガラスのさかなつり 」には冒頭のネコも登場します。
どうぞよろしくお願いします。