自由帳の絵1/「おじょうさん、夏売りをする」2008年

こんばんは(こんにちは)。
梅雨空の下、いかがお過ごしでしょうか。
私は今、ドビュッシーの亜麻色の髪の乙女を聞いている黒色の髪の婦人です。

今日からときどき、私の過去の自由帳から絵を掲載します。
現在開催中の「これまでと昨今の原画展」でご覧いただけるものも含まれます。

ここで長い余談を挟みます。
自由帳によく絵を描いた20代半ばの私の性格は、非常に閉鎖的で、絵の内容の方が私本人よりまだ社交的でした。
そんな頃、ある古民家ギャラリーのオーナーと知り合いました。
閉鎖的だった私がどうして彼女に進んで会いに行ったのかは、自分でもよくわかりません。

オーナーは不思議な人で、影響を受けた人は沢山いると思います。
私もその一人でした。
出会った翌日には、私の絵は知らない内に彼女によって拡大コピーされ、古民家の門前に貼り出され、“ともよワールド”と油性ペンで大きく書き添えられていました。
しかも貼り出された絵は、私がよそ行きとして描いた絵ではなく、何気なく描いていた自由帳の絵です。

「(せめてともよワールドという表現は)やめてくださーい!」と抗議する私に、彼女は「だってともよワールドでしょ?あなた、ここで初個展したら?」と、さも普通のことのように言い、私の絵をサクサク額に入れ、ガンガン壁に設置していきました。
展開が早すぎることだけは、私にもわかりました。

彼女は当時、このような内容のことを私に言いました。
「あなたみたいに家で隠れて何か作っている人が沢山いる/人に作品を見せてみたいと思っていても、あれこれ理由をつけて出さない/出せばいい/ヘンでいいからとにかく人前へ出す/話はそれから」

確かに話はそれからでした(良くも悪くも)。
私の初個展のタイトルは”自由帳から抜粋展”と言いました。
では当時の私のヘンな社交性の形をご覧ください。

自由帳の絵1
「おじょうさん、夏売りをする」2008年
画材/クロッキー用紙、鉛筆、アクリル絵具

この女性の名前はたぶん夕子さんです。
夕子さんの顔のバランスは、イラストとしては狂っています。
原画の裏から見るとよくわかります。
ですがバランスも世の一存在として狂う権利があります。
ですので私の絵のバランスの狂いは、私のバランス自身が引き起こしているもので私のせいではありません(てきとうに言ってます)。

夕子さんは夏を販売しています。
いらっしゃい と口に出すとき、彼女は人差し指と小指を立てます。
理由は私にもわかりません。
さてテーブルの上でいろいろな物が売りに出されています。

  • レモン味のアイスクリーム
  • アイスクリームスプーン
  • ビー玉
  • 水風船
  • 殺虫剤
  • てぬぐい
  • トウモロコシ
  • 風鈴
  • 花飾り
  • ガラスのデザートカップ
  • 貝殻
  • スーパーボール
  • 暑中見舞いハガキ
  • 枝豆
  • アイスキャンデーの棒(新品/ハズレ)

謎の五十円均一。
全ては彼女の夏です。
一つも売れなくても、夕子さんにとっては大したことではないと思います。

以上です。