絵と文15/「花鋏のおしゃべり」2015年

こんにちは。
わたしは花を切るはさみです。
たまにはものの声を聞いてって、そこの人。

わたしの持ち主はときどき絵を描くんですけどね
こないだあのひと
わたしのことを絵に描いたんです。
そしたらそれを傍で見ていたひとが
わたしのことを「そんなもの描いても意味が無いだろう」と言ったんですよ。
わたし、不愉快でした。

主がもしも花を描いたらなら
「意味が無い」なんてあのひと言ったでしょうか。
ね、そこの人。
わたしはわたしや絵に意味があるかどうかなんて
深いこと考えませんけど。
ただたんに、なんだか不愉快でした。
わたしのはがねだって、とてもかたくていいものですよ。

話して気分がよくなりました。
ありがとう、そこの人。

わたしは今日は百合水仙を切りました。
主がガラスコップに飾りました。
元気に咲いています。
切っているときは
実はちょっと気の毒に思いましたけど。
でも百合水仙はわるい気分の顔はしていないので、よかったなと思います。

わたしは花の声はよく聞こえないんです。
だからあのひとたちが何にも考えていないように思えますけど
まあわたしがこんなおしゃべりするってことは
あのひとたちだって、ぺちゃくちゃ何か言ってるのかもしれません。

百合水仙、わるい気分の顔には見えませんけど
ほんとうは切られて怒ってたりするのかもしれません。
又は、水がおいしいとか騒いでいるのかもしれません。
わたしもそのうち、花の声を聞いてってって、言われるのかもしれません。

わたしは今日はこわいことを考えました。
ね、そこの人。
話して気分がよくなりました。
ありがとう。
おやすみなさい。


使用画材/アクリルガッシュ、墨汁、紙
サイズ/150×150mm