バナナを描いている。
ご依頼いただいているものではなく、目的があってのものでもない。
数日前から、ただただ描いている。
まず8月19日の朝、寝坊した。
朝食を抜くと碌なことがないので、急いでバナナを食べた。
バナナを好きか嫌いかと聞かれたら、食べ物としては普通だ。植物としては好きだ。
それはともかく、その後手早く身支度をして家を出た。
出先で用を一つ済ませた後、道の途中で某カフェへ入った。
もう少しお腹に何か入れておこうと思ったのだ。
注文する最中、店員さんが私に尋ねた。
「お客様、バナナはお好きですか?」
午前9時、愛想を体内から引き出し損ねている私が真顔で正直に答えた。
「ふ……普通?です」
もう少し答え方があったかもしれない。
けれど店員さんは構わず微笑んでくれた。
「もしよろしければバナナマフィンのご試食はいかがですか?」
いただいた。
その日二回目のバナナだ。
私は当然のように三回目のバナナが現れる可能性について考えた。
起床して三時間も経たない内にバナナ二回。
こういうときは三回目のバナナが来る、きっと来る。
わくわくしながら待った。
けれどバナナは、来なかった。
念のため三日間、8月21日の夜まで待ってみたけれど、来なかった。
だから自分からバナナに向かうことにした。
それで、だからただただバナナを描いている。
もしかしたら私は、ちょっと疲れているのかもしれない。