ご挨拶と絵と文32「つよいきもちのきのこ」2021年

振り返ってみますと今年もまた、もういろいろありましたよね。きっと皆くたくたです。私もくたくたです。勝手に一緒にしてもうしわけありません。

本年もさまざまな形でご覧いただきありがとうございました。
ご協力いただきましたお店のスタッフの方々、(私から勝手にアドバイザーに認定されている)アドバイザーの皆さんも、ありがとうございました。
どうか良いお年をお迎えください。
来年もよろしくお願いします。

それでは本年の最後に今年の個展から一枚、文章を付けてご紹介します。

「つよいきもちのきのこ」2021年

頭にきのこが生えました。
少しじっとりしていながらも、真っ直ぐゆったりとしたきのこです。
突然こんなものが生えるなんて、こんなこと、あるものなのですね。

かわいそうな私の頭。
でも悲しくはありませんでした。
毎日ああだこうだと考えて生きていれば、きのこの一本や二本、生えてもおかしくはありませんものね。
そう、一本生やしていただければお分かりいただけると思います。
生えない方が不自然なのだということを。

「大丈夫。一食分食費が浮くわ」
鏡の前で、私はそう思いました。
ですからそれをていねいに収穫して、大きなフライパンですべてをソテーしてやりました。

それは複雑な味がしました。
ふと思い立って数滴垂らしたしょうゆが、その複雑さによく合いました。
「大丈夫。この複雑さは噛み砕けるわ」
大皿の前で、私はそう思いました。
それは、もう砕くことの出来ない複雑さに比べれば救いがあるものです。平らげてしまえるのですから。

そう、とにかく一本生やして召し上がっていただけばお分かりいただけると思います。
生えない方が不自然だったのだ、
ということを。


原画は個展「わるいきもちの芽」at ON minor project & 岩田商店galleryより
サイズ…150×150mm
画材…和紙、墨汁、アクリル絵具

お疲れさまでした