絵と文28/「カモメはかく語りき」2019年

毎月第3木曜日に浜辺を散歩する少女は、ある日カモメと出会った。
少女はカモメに、何となく好感を抱いた。
カモメは少女に、何となく好奇心を抱いた。
それで彼らは誓約の言葉もなく友達になったのだ。

少女はカモメに、カモメの前だから、ずっと秘めていた自分の悩みを打ち明けた。
「私、自分が何のために自分でいるのかわからないの」と。
「えっそうなの?」とカモメは驚いた。
そして言ったのだ。
「ぼくもぼくが何のためにぼくでいるのか知らないよ。そんなこと、知ってどうするの?」
こう言われて少女は驚いた。

カモメは唐突に、お腹がすいたと言った。
少女は悲しかった。
新しい友達も、自分のこの不安な気持ちを理解してはくれないのだろう、と思った。

カモメはすぐさま飛び立って、ほどなくして口に何かをくわえて戻ってきた。
そして言った。
「お腹がすいたからおやつを取ってきた。君にも一口すすめたいと思ったから戻ってきたよ」
少女はそれを丁重に断って、代わりに礼を口にした。

さて、カモメはお腹が満たされてやる気が出たのか
「じゃあぼく、君が何のために君でいるのか考えてあげる」と言って目を閉じた。
少女は複雑な気持ちを抱きつつ、待った。
やがてカモメは目つきを鋭くして、くちばしを開いた。
「うん、答えはこれしかない。君は君のために君でいるんだ」
これを聞いた少女は、膨れ上がった複雑な気持ちを目の前に投げつけたい気持ちになった。
だから、お行儀の良くない言葉を大声で海原に投げつけた。
カモメはこれに驚いて、少々飛び上がった。
そして恐る恐る言った。
「ごめんなさいね、気に入らないの?でも、ぼくならきっとぼくのためにぼくでいる。ぼくはぼくがお腹がすいたら、ぼくにおやつをあげる。でも、おやつが余ったら誰かにあげる。ぼくはぼくのためにぼくでいて、その後に、ときどき君のためのぼくになる。だから、君も君のために君でいて、君がお腹がすいたら君におやつをあげて。でも、おやつが余ったらぼくにあげるために会いに来て。
ぼくは、ポップコーンが一番すき」
こう言い終えてカモメは、その丸く張っている胸をより堂々と張った。

なんてカモメだ、と少女は思った。
けれどもポップコーンなら私もまんざら嫌いではないからまあいいか、とも思えた。

それで彼らはその後、会うたびに、より友達となったのだ。


使用画材…水彩紙、墨汁、アクリル絵の具
こちらの原画は譲渡済です。